ヘッダー方式とさや管ヘッダー方式

架橋ポリエチレン管・ポリブデン管(樹脂管)と言えば。
ヘッダー配管とかさや管について。
ちとマニアックな話。(再編集)

アクセスがありますし、勘違いされている方もいらっしゃるようなので、一度整理しておきますね。
微妙な言い回しの違いは、メーカーや施工会社、地域によって違います。
(それが問題かもしれませんが…)

樹脂管の施工は、『ヘッダー方式』や『さや管ヘッダー方式(工法)』が主流です。

『さや管ヘッダー方式』とはその名の通り、「さや管」と「ヘッダー」を使った配管方法です。それぞれ別の意味なので、分けて考えます。

 

『ヘッダー(管)』とは配管の集合している部分で、屋外から引き込んで、専用のヘッダーからそれぞれの水栓へ分岐する部分。
大抵太い配管から細い配管が各所へ分岐されています。(ヘッダー配管自体は住宅設備以外でもあります)

この写真は、ウチでヘッダー方式を導入した頃なので、20年くらい前のもの。
今とはだいぶ雰囲気が違います。
当時、太い配管がなかったので、一次側は樹脂管ではありません。

 

コレがほぼ最近のもの。
保温材がかぶっているのでわかりにくいですが、中身は下の写真のものが入っています。
(保温材を被せながら配管していくので、分かりやすい写真が少ないですね

これが中身のヘッダー(樹脂製)の配管前

ヘッダー方式に対して、昔からある配管方法は、目的地まで配管を伸ばして行き、近くで分岐、さらに伸ばしてまた近くで分岐と繰り返して配管しました。

それで、ヘッダー工法に対して「先分岐工法」とか言っています。
昔はそれしかなかったんで、先分岐工法だと思ってはいませんでしたが、区別する為にそんな言い方をします。
現場じゃ言いませんけどね。「ヘッダー工法じゃない」工法です。

 

『さや管』は、電気工事でもお馴染みのじゃばら管。
さや管は、あくまでも「さや」なので水を通すことができません。その中に樹脂管を通すので、更新性があると言われています。
さや管とボックス

(水栓ボックスとさや管)

器具との接続の部分にはさや管を繋ぐ水栓ボックスが付きます。

さや管も水は水色、お湯はピンク色のさや管を使う事が多いです。
さらにさや管に保温材が巻いてあるものもあり、こちらは「保温材付きさや管」です。

 

全般的に樹脂管は継手も含め材料費が高いのですが、施工が簡単(特殊な機械は必要なく、施工も短時間)なので、工事費が抑えられるイメージ。

特徴をメリットデメリットでまとめると。

『ヘッダー方式』
ヘッダー部分から各水栓まで1本の配管のみで繋ぎます。
途中にジョイントがないので、漏水するリスクが少なくなり、複数水栓を同時使用した際の水圧変動が少なくなります。
配管長さが増えて材料が多くなり、部品も高価です。材料費は高くなりますが、(配管技術があまりいらないので)工事費は安くなる場合が多いです。

 

『先分岐方式』
配管を伸ばして分岐を繰り返して配管する従来の配管方法です。
屋外配管は、ヘッダー方式のメリットが少ないのでこの方式が多いと思います。
配管材料が少なくて済むので、コストは抑えられます。
樹脂管での先分岐方式は、あまりメリットが感じられませんが、強いて言えば、施工に時間がかからず、技術がいらない事、更新性は従来配管と一緒なのでありません。

 

『さや管』
さやに入っているので、配管の交換が容易です。
実際の配管の耐久年数的には交換する事はほとんどないかもしれませんが、リフォームなどで配管を延長する場合や漏水の修理などはやりやすくなります。
また、配管の保護という意味もあります。さや管との隙間があるので、裸の配管よりは保温性はあります。
デメリットは材料費と工事費のダブルでコストアップしちゃうところですね。

『保温付さや管』
さや管に保温材が巻いてあるもの。保温材があるので結露や凍結などから守られ、さや管のメリットもあります。
デメリットは、当然コストアップになり、配管が太くなり取り回しにくくなる事ですね。

給湯用保温材付さや管とポリブデン管の組合せ。オレンジ色のちょろっと見えているのがさや管ですね。

 

『保温付樹脂管』
さや管がなく、樹脂管に保温材が巻いてあります。
配管の結露や凍結を防ぎます。
さや管とは違い中のパイプだけを抜いたり挿したりはできません。
長野県のような寒冷地だと保温材付が多いと思います。

(給湯用保温材付ポリブデン管)

 

現場的なメリットは施工の早さでしょうね。
施工者からすれば、作業が早く、簡単になるのでありがたいです。さらに『さや管工法』だと隠ぺい配管で忙しい時にさや管だけ入れといて、仕上がってから配管を通して繋いだり、現場の作業量の調整もできるメリットもあります。

上のような組み合わせで仕様が決まり、例えば『保温付架橋ポリエチレン管のヘッダー方式』とか言ってます。

間違って、保温材付架橋ポリエチレン管を使った工事を『さや管ヘッダー工法』だとか紹介してあったりしますが、『さや管』を使っていないので、『さや管工法』ではありません。樹脂管を使ったからといって『ヘッダー工法』だとは限りません。
樹脂管を使った先分岐工法もありますし、組み合わせてある場合もあります。

 

ちなみに、地元の長野県企業局の施工基準(令和4年4月1日改訂)では、
架橋ポリエチレン管、ポリブテン管を使用する場合は、さや管ヘッダー工法を基本とする。』とあり、さらに、
さや管には、ヘッダー工法専用のものを使用し、給水系、給湯系を色分けして区分すること。』とあります。
やはり。
樹脂管やヘッダー工法の特徴やメリットを考えると『さや管ヘッダー工法』が基本になるんじゃないかとは思います。

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