断水工事

昨日のニュースにもなった和歌山市の断水のはなし。

引用元 産経新聞 2020.1.20 23:06
和歌山市の断水騒ぎ、なぜ起きた? 水道管老朽化、対応遅れる自治体
漏水していた水道管の修繕工事に伴い、市全体の5分の1を対象とする大規模断水を予定していた和歌山市が20日、断水しなくても修繕が可能なことが判明したとして、急遽断水を中止した。なぜこんな騒ぎが発生したのか。背景にあるのは、水道管の老朽化と、それに対応しきれない自治体の厳しい財政状況。同様の課題は全国各地で抱えている。

 「市民に多大な迷惑をかけ、申し訳ありませんでした」。20日午前、市役所で会見した尾花正啓市長は深々と頭を下げた。

 市によると、8日にJR和歌山駅東側の国道24号の交差点地下にある水道管で漏水が判明。昭和37年に埋設された大量の水を供給する基幹水道管(直径約80センチ)からの漏水が想定され、断水せずに修繕すれば1カ月以上かかる可能性もあるとして、市は16日、市全体の5分の1にあたる約3万5千世帯(約8万人)を対象に19日午後10時から22日午後10時にかけ断水すると発表した。

 実施わずか3日前の発表を受け、市民らは飲料水を買い求めスーパーなどに殺到。飲食店や宿泊施設も相次ぎ休業を決めるなど混乱が広がった。

 ただ、具体的な漏水場所は工事当日まで不明のまま。「掘り起こしてみないと分からない」(担当者)状態で現場の掘削を始めたところ、基幹水道管ではなく、枝分かれした細い管(直径約15センチ)での漏水が判明した。市は断水せずに細い管の修繕を進め、翌20日未明に完了した。

 市によると、市内の水道管の総延長は約1500キロで、大半が昭和30~40年代に施工を終えている。一方、水道管の法定耐用年数は約40年。これを超えた水道管は全体の約17%にあたる約250キロに及んでいるという。
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 ただ、市では水道管に水を供給する浄水・配水施設も老朽化しており、予算などの制約上、施設建て替え事業を優先。今年度から当面4カ年の計画で、年約10億円の事業費で水道管の更新を始めたばかりだった。

 混乱を受け、市民からは批判の声が上がった。

 「告知が遅すぎて高齢者に十分な準備ができないことは明白」と憤ったのは断水が予定された連合自治会長の男性(86)。小学4年と3歳の子供がいる主婦(40)も「古い水道管が危ないことは昔から分かっていたはずだ。計画的に更新しなかったのは市の怠慢」と話した。

 市によると、断水の苦情や問い合わせなどの件数は19日現在で約2100件。市は今後、断水する場合の広報のあり方などを検証するとしている。

 ■「どこでも起きうる問題」耐用年数超え水道管は全国で15%超

  水道管の老朽化が引き起こす問題は、和歌山市のみならず各地で浮上している。全国で法定耐用年数の40年を超えた水道管は15%以上を占めており、専門家は「どこでも起きうる問題だ」と警鐘を鳴らしている。

 厚生労働省によると、全国に張り巡らされた水道管約71万キロの多くは昭和50年前後の高度経済成長期までに敷設。当時から更新されていないものも多く、平成29年度時点で16・3%が法定耐用年数を超えている。

 一方で老朽化した水道管の事故は近年相次いでいる。

 水道に詳しいジャーナリストの橋本淳司さんは、水道管が更新されない背景に、自治体の厳しい財政状況があると分析。人口減少で税収が減る上、一人一人の節水に対する意識の高まりから、料金収入も減少傾向にあるという。
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 橋本さんは「耐用年数を超えた水道管全てをただちに更新することは難しい。人口減少社会をふまえ、需要の多い水道管を選別した更新計画が必要だ」と指摘する。

 和歌山市では、断水を告知した当初、住民から「断水をやめてほしい」という声が上がる一方、「水道管の老朽化の対策が必要ではないか」と工事を望む意見も出ていた。橋本さんは「それぞれの自治体ごとに水道管に関する情報を開示し、住民らの合意形成を図っていく必要もある」と話している。

断水工事に携わっている立場からすると、まず3.5万人3日間の断水は思い切ったなと。

昔は水道工事と言ったら断水がつきものだったんですが、最近は断水しないように、しないように、工事を行います。
安定したライフラインの為には必要だとは思うのですが、その為に工事費が高額になったり、思い切って断水すればすっきり分かりやすくなる配管も、複雑でメンテしにくい状態になったりする場合もあるので、何となく腑に落ちません。

通常の漏水修繕だと、試掘して漏水状況の確認、機材の準備、その場で直せれば直すけど、だめなら改めて断水工事で修繕。って手順が一般的だと思うんですが。

口径800mmともなれば何かあった時のリスクがでかいし、場所も国道の交差点だそうなので、確認するだけでも容易ではないですし、廻りを掘る事によって漏水量が増えたりする事もあるので、思い切って止めて直そうって作戦だったんでしょう。

告知からの時間が短かったのも、時間が経つにつれて漏水量が増えたり陥没したりする事もありえるので、早く修繕する為にしょうがないのかなと。

結果、近くの150mmの配管だったと、断水していないようなのでカバージョイントか何かで直したんだと思うんですけど。
断水無かったからって謝らなければいけないのは、何か悲しいですね。

色々今後改善する事はあるんでしょうけど、断水の判断は英断だったんじゃないかなぁ。

引用元ヤフーニュース

【検証】和歌山市が断水回避。よかった?悪かった?断水は全国で起きる?

漏水発見、断水決定、断水回避までの流れをふりかえる

 和歌山市が漏水していた配水管を交換するために計画していた「長期断水」を回避した。

 和歌山市民に話を聞くと「断水しなくてよかった」という声が多いが、「この機会に老朽化している配水管を交換したほうがよかったのではないか」という人も少なからずいた。

 尾花正啓市長は「断水を回避できたとはいえ、市民の皆さまには多大なご迷惑をおかけした」と謝罪したうえで、管路の老朽化や漏水への対策として、管路破損箇所の探索技術を向上すること、優先順位を決めた老朽管の更新などを上げた。

 断水しなかったことの良し悪しを論じるときに、短期的な視点と長期的な視点がある。短期的に見れば、断水回避は市民生活にとって好ましい。一方、長期的に見ると水道持続性が危ういという実態が浮かび上がる。そして、これは和歌山市に限ったことではない。

 まずは、今回の漏水発見、断水決定、断水回避までをふりかえってみたい。

 1月8日 漏水の発見

 和歌山市内、国道24号線の直下に埋設された水道管からの漏水判明。漏水管は直径800ミリの配水管とされた。
水道管の種類(厚生労働省資料)

 水道管は役割ごとに名前が違う。

 導水管…原水(河川水や地下水)を浄水場まで送る管

 送水管…浄水場できれいになった水道水を配水場まで送る管

 配水管…配水場から各家庭に水道水を送る管。一般的に公道の下に埋められている

 給水管…配水管から各家庭に水道水を送る管

 配水管はメインで水を送る基幹(口径が太い)と、そこから分かれる枝管(口径が細い)に分類される。和歌山市で漏水していると見られた配水管は、直径800ミリの口径の太い基幹管路で1962年敷設された。敷設から58年が経過し老朽化が進んでいた。

 1月16日午後5時 断水の発表

 直径800ミリの配水管の修繕方法には、断水させないまま工事を行う方法と、断水させて行う工事がある。一般的に前者は工期が長くコスト高、後者は工期が短くコスト安。今回は、漏水によって道路陥没が起こる可能性があると考え、断水し、開削による緊急工事を行うこととした。

 1月19日夜から22日夜の3日間の断水を、HP、SNS、郵便で周知開始した。和歌山市企業局のHPには

「国道24号花山交差点内に埋設されている基幹配水管から漏水しています。交通量が多いこの交差点で、今後漏水量が増える可能性があること、水圧で地盤が崩壊することで道路が陥没するおそれがあることから、やむを得ず断水を行い修繕工事をすることにしました。」

 とある。

 これによって影響を受けるのは、市全体の5分の1にあたる約3万5千世帯(約8万人)。市民は飲料水を買い求めスーパーなどに殺到。飲食店や宿泊施設も相次ぎ休業を決めるなど混乱が広がった。年配者のなかには「3日間では準備ができない。発表から実施までが短い」という声もあった。

 一方、和歌山市企業局では、断水中の応援給水を、和歌山県内、大阪府、奈良県の水道事業者に要請した。断水に備えた市民の中には給水車が用意されることを知らず、「3日間すべて自前で水を確保しなければならない」と考えていた人もいた。

 1月17日午後1時 市長を本部長とする対策本部を設置

 断水に備え、医療基幹に給水車を常時配備を行うため、給水車の応援要請を拡大した。

 1月18日 地下を探索

 試験掘削や路面音聴調査により、道路の下で、幅約1.9メートル、長さ約1メートル四方に2カ所の空洞がある可能性を確認。19日午後10時から予定していた道路の規制を早めた。

 同時に、該当する直径約800ミリの配水管から、150ミリの細い管が枝分かれしていることが判明。

 

 1月19日午後7時 漏水現場の道路開削開始

 現場の掘削を始めたところ、800ミリの配水管ではなく、150ミリの細い管での漏水が判明。

 1月20日午前2時 修繕工事が終了

 

 1月20日午前5時 断水取りやめを発表

 断水を回避したことで市民には安堵の気持ちが広がった。一方で、水道管が老朽化しているという問題は放置されたままだった。それが、「この機会に老朽化している配水管を交換したほうがよかったのではないか」という声につながっているのだろう。

 だが、これは和歌山市だけの問題ではない。今回の件は、全国の自治体で起こりうる。理由は「老朽化した水道管が放置されている」「水道管の図面をもっていない自治体がある」「水道技術の継承ができていない」の3点だ。
老朽化した水道管が放置されている

 老朽化した水道管の破裂事故は、毎年1000件を超えている。多くは細い配水管、給水管で起きているので、私たちが不便を感じることなく修繕されているのだが、今回のような基幹管路で起きる可能性はある。

 水道は高度経済成長期を中心に整備され、水道管が古くなっている。法定耐用年数40年を経過した管路(経年化管路)は15超%あり、法定耐用年数の1.5倍を経過した管路(老朽化管路)も年々増えている。

 本来、和歌山市で漏水が疑われた800ミリの配水管は、敷設されてから58年が経過した老朽化管路である。重要な基幹管路なのだから、すでに交換されているか、重点的に点検されているべきだった。

 理由としてあげられているのが財政難である。

 生活用水使用量の減少、人口減少によって水道水の使用量が減り、料金収入が減少している。

 それに加えて地方自治体は公共事業を運営するための資金を、企業債(借金)を発行して賄う。2016年の発行額は全国で2兆3000億円で下水道事業が49%、水道事業が18%。借金が経営を圧迫している。

 ただし、水が何日も止まるというのは命に関わることだ。それは今回、医療機関専用に給水車を配置されたことからもわかる。財政難で片付けず、管路の重要度を見定めて、更新計画を進めるべきだった。
水道管の図面をもっていない自治体がある

 今回、漏水していたのは、当初疑われた800ミリの配水管ではなく、そこから枝分かれした150ミリの管だった。この細い管の存在がわかったのが、断水決定より後であることに、違和感を覚える読者は多いだろう。

 じつは、敷設されたすべての水道管を把握していない自治体がある。

 厚生労働省の調査では、全国の38パーセントの自治体が正確な図面をもっていない。自治体の行政文書保存の期限を過ぎて捨てられてしまったり、小規模事業者では「図面はベテランの脳内にある」というところもある。

 基盤強化を掲げた改正水道法では資産管理の徹底がうたわれているが、小規模事業者では日々の業務に追われて、台帳整備に手が回らない。民間のコンサルタントの活用がうながされているが、事業が赤字で費用の捻出が難しいケースもある。そのため基盤強化の第一歩が踏み出せない。
水道技術の継承ができていない

 和歌山市の漏水発見から、断水の決定、断水の中止に至るプロセスのなかで、疑問に感じることがある。

 まず、これまで点検がどのような体制で行われてきたのか。

 漏水している管をなぜ800ミリの管と思い込んでしまったのか。

 断水決定の前に確かめることはできなかったのか、などである。

 もちろん道路陥没などの恐れもあり、緊急事態の中の行動であり、経験もなかったのであれば、しかたがないと言えるかもしれない。今回のことをつまびらかにし、市民や他の自治体と情報共有すべきだろう。今後同様なことが起きた場合、どのような対処法がよいのかの学びになる。

 一般論として、水道技術の継承は危うい。

 1980年に全国に7万6000人いた水道職員は、2014年には4万7000人になった。これにともない水道事業から専門性の高い技術が失われつつある。たとえば、漏水管を修繕し、有収率を上げようという意識や漏水箇所を見つける技術にも水道事業者によってばらつきがあるし、今回のような緊急時、災害時などの深刻な事態に即応できない状況も生まれている。

 水道専門の職員をおかず、異職種間の人事異動を実施している事業体では、問題の先送りという事態も起きている。

 人口が減り、水道施設がボロボロになっていくという事実は変わらない。

 それでも、市民は水が止まったら生活することができないのである。水道事業者は責任と誇りをもって仕事をして欲しい。
現状を市民と共有する

 本来なら「自分のまちの水道をどうするか」というビジョンを立て、行動していくことが大切だ。

 まちの人口減少に合わせて、施設・設備を再度計画し、更新や長寿命化をはじめとする経営の「見通し」を立てることが急務だ。

 そのためにも水道の現状をいかに地域で共有するかが重要になる。目先の断水が回避されたことに安堵すべきではない。自分の住むまちの将来をイメージし、どのようなサービスが必要か、どのくらいの負担が可能かを、行政と市民が議論していくべきだ。

たまに書いていますが、この老朽化問題はどこの水道局もありえる話。
耐用年数過ぎてる配管なんてそこら中にあります。
予算に余裕のあって、どんどん更新できる自治体なんてほとんど無いんじゃないかな。

あ。ちなみに。
150mmの配管が『細い』みたいな感じですけど、やる側からすると十分『太い』ですよ。